気象予報士試験・学科と実技は切り離すな!~第64回気象予報士試験〈実技〉に見る学科の要素(2)~
- 佐々木恭子

- 2025年9月5日
- 読了時間: 5分
こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・佐々木恭子です。
前回「学科が終わったからといって、全く新しい分野に切り替えるような意識は禁物」というお話をしました。学科と実技は切り離せないということを忘れず、今回はもう一つ、第64回気象予報士試験から学科分野の知識だけで解ける問題を紹介します。相当温位がどういう物理量なのか、対流不安定とはどのような成層なのかなどを理解していれば解答できます。
■第64回気象予報士試験【実技1問4(3)一部】
実技1問4(3)では、すでに解析されているシアーライン(風向・風速が不連続な線)と鉛直断面図を用いて答える穴埋め問題です。穴埋めはサービス問題が多いので、取りこぼさないようにしましょう。問題文を、少しずつ分解して見ていきます。※図13については、実際の問題の図をご覧ください。

「図13によると、シアーラインは水平方向の相当温位傾度が大きい領域の東縁にあり、東側で相当温位が相対的に(①)い。」
▶「傾度が大きい領域」は、狭い範囲で相当温位が大きく変わるところであり、等値線が詰まっているところを指します。相当温位傾度が大きい領域の東側と西側で、相当温位の値自体を比較して解答すればよいだけです。
「相当温位傾度が大きい領域は、その周辺を含めて湿数が比較的一様であることから、(③)傾度も大きいと考えられる。」
▶実技の勉強が進むと、高相当温位の空気塊は「暖湿である」と覚えて、その内訳を置き去りにしてしまう方も多いのではないでしょうか。相当温位は、温位(温度によるエネルギーと位置エネルギー)と潜熱(水蒸気のエネルギー)の総和で示される値です。例えば、345Kの相当温位の空気塊でも、水蒸気が少なく温位の高い「高相当温位」もあるということです。ここでは、相当温位傾度が大きくても湿数が一様ということなので、温位(温度)の差が大きいことを表しています。
「図13の風を地衡風とみなすと、800~950hPaの気層の温度移流は、シアーラインの東側は(④)移流、西側は相当温位傾度が大きい領域を除き(⑤)移流である。」
▶鉛直方向の風のシアーから、温度移流を解答するものです。一般分野では、ホドグラフを使って温度移流を考えましたよね。その考え方で解答できる問題です。
「図13によると、対流不安定な成層はシアーラインの両側に見られるが、その厚さは東側のほうが相対的に(⑥)い。」
▶対流不安定な成層は、上空ほど相当温位の値が低くなる(上空ほど乾燥している)層を指します。そのような成層が何を意味するのか、一般分野を復習して整理しておきましょう。
「また、相当温位傾度が大きい領域の東縁付近の強い(②上昇)流域では、相当温位が周囲より(⑧)く、鉛直方向の相当温位の勾配が相対的に小さい。これは(⑨)によって大気が(⑩)したためと考えられる。」
▶「鉛直方向の勾配が相対的に小さい」というのは、縦方向に等値線の間隔が(周りと比べると)広くなっているところを指します。ここでは、鉛直方向に相当温位があまり変わらないということです。これは、上昇流が強いことを考慮して、このような相当温位分布になるのはなぜかを考えましょう。例えば、『一般気象学』(小倉義光/東京大学出版会)P73~など参考になります。
■鉛直断面図を覚える必要はない
出題される鉛直断面図は問題ごとに変わってしまいますので、いちいち覚える必要はありません。それよりも、鉛直方向に相当温位分布はどうなっているのか、対流混合するとどのようになるのかなどを理解できていれば、図の見方も短い時間で把握できるようになります。
学科一般の、特に熱力学の分野は苦手な方も多いと思いますが、ここは気象の理解を深める要です。学科は合格したから…と、放ってしまうのではなく、念入りに学習しましょう。
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この記事を書いた人
TeamSABOTEN気象予報士スクール
気象予報士・防災士 佐々木恭子
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