top of page

【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第63回気象予報士試験<実技1>

更新日:10月26日

TeamSABOTENのスクール講師・佐々木恭子です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

「いつも問1?」と思われるかもしれませんが、問1では、地上天気図や地上実況のほか、高層天気図で強風軸の状況を確認したり、気象衛星画像で雲の様子、上空の流れなどあらゆる実況が問われます。

つまり、問1を完璧にするだけでも、様々な問題に対応できるようになるということです。

第64回試験に続き、第63回試験の実技試験問1解説シリーズです。


■第63回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)


 4月30日の21時の日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑧ )に入る適切な数値または語句を答えよ。ただし、①②④は整数、③⑦⑧は下の枠内から1つ選び、⑤は正負の符号を付した数値、⑥は漢字で答えよ。


図1によると、千島近海には前線を伴った低気圧があり、ゆっくりと( ① )ノット以下の速さで北に進んでいる。この速度を維持したまま進むと、この低気圧の中心は、24時間後には現在の位置から北に緯度にして0°~( ② )°の範囲に位置することになる。この低気圧の南に位置する根室では、25ノットの( ③ )風を観測し、( ④ )時間前に比べて気圧は( ⑤ )hPa変化している。また、千島近海の低気圧と東シナ海の低気圧に対して( ⑥ )警報が発表されている。


千島近海の低気圧は最盛期となっているが、図2によると、この低気圧の中心付近に向かって上・中層雲のない領域が巻き込むようにのびている。これは、( ⑦ )に対応すると考えられる。また、図2によると、東シナ海の低気圧の中心付近とその東側に2つの( ⑧ )が見られる。


選択肢

③ ( やや強い 強い 非常に強い 猛烈な )

⑦⑧( カルマン渦 クラウドクラスター クラウドリーフ バルジ

    トランスバースライン ドライスロット 筋状雲 波状雲 )


■①②は低気圧の移動を読み取る


第63回気象予報士試験  実技1  地上天気図
画像1) 第63回実技1 図1 地上天気図

第63回気象予報士試験  実技1  地上天気図
画像2) 図1の「千島近海の低気圧」周辺を拡大

低気圧や高気圧の移動については、中心付近に描画されている白抜き矢印の方向と速度を読み取ります。

速度については通常[KT(ノット)]で表されますが、動きの遅いものについては、[SLW]や[ALMOST STNR]と表記されます。意味は以下の通りです。


[KT] KNOT…ノット。速度、風速に用いる

[SLW] SLOWLY…ゆっくり。速度5ノット以下で進行方向が定まっている

[ALMOST STNR] ALMOST STATIONARY…ほとんど停滞。速度5ノット以下で進行方向が定まっていない


速度5ノット以下で進むじょう乱については、進行方向が定まっているか定まっていないかの違いで表現が異なるので注意しましょう。

この問題は、「ゆっくり」北上する低気圧についてです。①は( 5 )ノットとなります。


次に、②の空欄に入る「この速度を維持したまま進んだ場合の24時間後の低気圧の中心位置」について考えてみましょう。


速度5ノットは「時速5NM(海里)」という意味です。1時間に5NM進むのだから、24時間後には現在の位置から北へ120NM程度進むということです。

ここで、次のことを必ず覚えておきましょう。


緯度10°=1110km もしくは 600NM(海里)


実技分野では、じょう乱の移動速度や距離などを計算しなければならない問題が出題されます。

その際、緯度10°分の長さを天気図上で測り取り、それを基準にして計算をします。

この問題に限らず使う必須アイテムです。


本題に戻ります。移動距離120NMは600NM(緯度10°)の5分の1なので、緯度2°です。つまり、②は( 2 )°となります。


① 5

② 2


■③~⑤は記号から天気を読み取る

<学習のヒント>記号の読み取りはよく出題されるのでしっかり覚えたほうがよい


天気図記号
画像3) 気象庁HPより

③~⑤の根室の風、気圧変化については中央の△(地点円)の右側の数値と記号を読み取る。

天気図記号  根室の実況
画像4) 根室の実況
速度、風速、距離の換算表
画像5) 速度、風速、距離の換算表(気象庁ウェブサイトより)

画像6)風の強さと吹き方(気象庁ウェブサイトより)
画像6)風の強さと吹き方(気象庁ウェブサイトより)

③は枠内から風の強さの予報用語を選択する問題で、予報用語は基準となる値が決まっています。まず25ノットの風を秒速に変換します。簡単に計算もでき(1ノット=1852m/3600秒)、ノットの値×0.51でおおよその秒速(約12.8m/s)を算出できますが、気象庁ウェブサイトにある換算表によると約13m/sになります。13m/sは、風の強さと吹き方の予報用語で「やや強い風」となります。したがって、③は枠内から「やや強い風」を選択します。


気圧変化傾向・変化量は、観測時刻前3時間の気圧変化を表すものです。

このうち、気圧変化量は小数第一位までの値を2桁の数値で表し、気圧が上昇していれば+(プラス)、下降していれば-(マイナス)の符号をつけて表されます。

根室では、気圧変化量が「+34」となっていますので、「観測時前3時間で3.4hPa上昇した」という意味になります。

ちなみに、3時間で±10hPa以上の変化がある場合は3桁の数値で表されます。


ということで、根室では④( 3 )時間前に比べて気圧は⑤( +3.4 )hPa変化しているとなります。


③ やや強い風

④ 3

⑤ +3.4


■⑥は海上警報を答える。

<学習のヒント>必出です。「なんだっけ?」と考えることもなく、反射的に出てくる程度には暗記しておこう。


海上警報の種類
画像7) 実況天気図に表示される全般海上警報(気象庁HPより)

低気圧の中心の近くにある[GW]を読み取ると(画像2参照)、千島近海の低気圧には[海上強風]警報が発表されていることがわかります。


⑥ 海上強風


■⑦⑧は気象衛星赤外画像から雲のパターンを読み取る

<学習のヒント>温帯低気圧の発達段階に応じて見られる、特徴的な雲パターンを覚えておこう。


温帯低気圧は発達の段階に応じて、低気圧周辺に様々な雲パターンが現れます。

特に低気圧が発達している状況を示す「バルジ」、バルジの北縁に分布する高気圧性曲率を持つ上層雲「シーラスストリーク」など、典型的なものについては、その名称と形状、形成要因なども覚えておくとよいでしょう。


第63回気象予報士試験  実技1  気象衛星画像
画像8) 第63回実技1図2 気象衛星赤外画像に加筆

ここでは、「低気圧は最盛期となっている」がヒントです。

確かに、千島近海にある低気圧は閉塞過程に入っており、低気圧の発達は最盛期です。

閉塞段階では、乾燥した空気が低気圧の南側を回り中心に流れ込むのが特徴です(画像8の黄色破線)。

その特徴は、「ドライスロット」と呼ばれます。これは水蒸気画像でも明瞭に見られます。

ということで、⑦には(ドライスロット)が入ります。


第63回気象予報士試験  実技1  気象衛星画像
画像9) 図2のクラウドクラスターを拡大

一方、東シナ海には低気圧の中心付近とその東側に、真っ白な団塊状の雲域が見られます。このような団塊状の雲域は、対流性の雲の集合体で「クラウドクラスター」と呼ばれます。

また、東側の雲域には「にんじん状」の雲も見られます。

これは、風上側から風下側に広がった積乱雲の雲列と上層風に流された雲頂(かなとこ雲)で構成されています。


⑦ ドライスロット

⑧ クラウドクラスター


気象衛星画像の雲パターンについては、気象衛星センターのウェブサイトでもいくつか紹介されています。


気象衛星センター
気象衛星センター 

時間があるときには、このようなサイトでどんな雲パターンがあるのか調べてみると楽しいですよ!



この記事を書いた人

TeamSABOTEN気象予報士スクール

気象予報士・防災士 佐々木恭子



2025年9月28日(日)13時~17時にオンラインライブ(アーカイブあり)で開催。

テーマは「学科で実技の得点を伸ばせ!」です。

第64回気象予報士試験の分析をふまえ、完全合格のための効率の良い学習方法を解説!

そのうえで、実技によく出る学科の知識と実技の基礎を復習し、得点を伸ばせるように講義を行います。

次の試験で合格を目指す方はもちろん、学科勉強中や実技初学者の方にもおすすめの講座です。

気象予報士試験対策  試験で点をとる講座


気象予報士試験対策  試験で点をとる講座



●TeamSABOTEN気象予報士スクールからのお知らせ


TeamSABOTENでは、合格のための様々なコンテンツをご用意しております。

ぜひご活用ください。



模試付き総合パック


実技完全パック


気象予報士試験対策  実技の基本のキ


気象予報士試験対策  実技入門コース


実技事例演習コース


気象予報士試験対策  実技過去問解説


実技時短サーキット


気象予報士 合格模擬試験


気象予報士試験対策  サボテンドリル



TeamSABOTEN 気象予報士スクール

当スクールでは、学科分野から実技分野まで気象予報士試験に合格できる様々なオンライン講座をご用意しています。 また、長年 オリジナル模擬試験も作成・販売しており、 “ 気象の本質がよくわかる ” と 受験生に大好評です。 気象予報士の資格取得後は、気象の専門家を目指してスキルアップできる環境も整っています。


コメント


気象予報士試験に役立つ無料メルマガ登録
bottom of page