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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第62回気象予報士試験<実技2>

TeamSABOTENのスクール講師・佐々木恭子です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

第62回実技2は低気圧の通過と日本海のシアーラインの事例です。


■第62回気象予報士試験<実技2>

実技2問1(1)


地上天気図
画像1)図1 地上天気図

 29日21時の日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑩ )に入る適切な語句または数値を答えよ。ただし、①は下の枠内から1つ選び、③は十種雲形を漢字で、⑤は漢字で、⑧は16方位を漢字で答えよ。


図1の地上天気図では、前線を伴った低気圧が秋田沖および九州付近にあって、発達しながら東へ進んでいる。また、沖縄の南から日本の南にかけて停滞前線がのびており、南西諸島では雨を観測している。

低気圧が接近している秋田の現在天気は( ① )雨で、気圧は( ② )時間前に比べて3.6hPa下降している。一方、東京の現在天気は晴れで、( ③ )を観測しており、8分雲量は( ④ )である。

秋田沖の低気圧に対しては( ⑤ )警報が発表されており、低気圧の周辺海域では( ⑥ )時間以内に、最大風速が( ⑦ )ノットとなる見込みである。この警報で30ノット以上が予想される範囲は、低気圧の( ⑧ )側のほうが広く、中心から( ⑨ )海里となっている。

図3の850hPa面によると、秋田沖の低気圧の周辺では最大風速( ⑩ )ノットの南西風が吹いており、そこは強い暖気移流の場になっている。


選択肢

① ( 弱い 並の 強い 激しい )


■①~④は観測された天気を読み取る

<学習のヒント>地上気象観測の雲量は10分雲量である


観測実況の記入型式
画像2)観測実況値の記入型式(気象庁HPより)

現在天気の天気記号
画像3)現在天気の天気記号(気象庁HPより)

東京と秋田の実況
画像4)東京の実況(左)と秋田の実況(右)

秋田の実況

「現在天気」を問われたら、地点円(雲量を示す○)の左側にある天気記号を読み取ります。秋田では「雨」で、横に2つ●が並ぶと弱い雨の意味になります。1つだけの●も弱い雨ですが、その違いは、1つだけの●の場合は前1時間内に止み間があった弱い雨、2つの横並びの●の場合は前1時間内に止み間がなかった弱い雨です。ちなみに、●が縦に2つ並ぶと並の雨の意味になります。ややこしいので要注意です。(画像5参照。現在天気の番号は画像3に対応)


現在天気の解説60と61
画像5)現在天気の解説(気象庁HPより)

気圧変化量は、地点円の右側に書かれている数値で、前3時間の気圧変化量を表しています。小数第一位まで表記されるため、「-36」は3.6hPa下降の意味になります。


東京の実況

現在天気が晴れとなっているのは、地点円の右側に観測された大気現象がなく、円で示される雲量の記号から読み取ったものです。また、観測された雲については、中層雲が観測されていますので高積雲を解答します。

ここで注意が必要なのが④の「8分雲量」です。地上気象観測で「8分雲量」というのは本来は存在しません。


雲量の記号
画像6)雲量は10分雲量(気象庁HPより)

ここにもあるように、雲量は全天を10として雲の占める面積の割合を数字で表したものです。それを地点円を塗りつぶす記号にすると上記のようになります。すると、東京の雲量は「4」です。ここで観測されている雲は高積雲で、地点円の右下に書かれている数字(画像2の「Nh」)は「3」となっています。これは、下層雲(もしくは中層雲)の雲量を意味する符号であり、雲量にするとやはり「4」です。

右下に記される下層雲の雲量を符号で示すのは、1桁の数字しか使えないためです。ところが、気象予報士試験では数年前から「8分雲量」や「8分量」と言うようになり、誤った慣習が続いています。気象予報士試験では仕方ないので「8分雲量」などと問われたら、右下の数字をそのまま解答するしかありません。

ただ、合格した暁には間違えないようにしましょう。


① 弱い

② 3

③ 高積雲

④ 3


■⑤~⑨は付記された情報の読み取り

<学習のヒント>「海上暴風警報」級に発達する(発達した)低気圧に情報が付記される

発達中の低気圧の情報
画像7)図1地上天気図の情報部分を拡大

DEVELOPING LOWとありますが、日本付近に前線を伴う低気圧は2つあり、どちらの低気圧についての情報か一見すると分かりません。このような情報は、台風もしくは海上暴風警報[SW]級に発達する(発達した)低気圧に対して付記されます。そのため、この情報は秋田沖に中心を持つ低気圧に対して発表されていることが分かります。(この問題では、「秋田沖の」と指定があるのですぐに分かるようになっています)


海上警報の種類
画像8) 全般海上警報(気象庁HPより)

付記されている情報

[中心気圧] 1010hPa

[中心の緯度経度] 北緯39度 東経139度

[進行方向 速度]  35ノット

[今後18時間以内に30ノット~50ノットの風が見込まれる範囲] 

1500海里 南西側半円/700海里 北東側半円

※出題に関連しているところを黄色ハイライトにしています。


この情報を読み取ると、この低気圧の周辺海域では18時間以内に、最大風速50ノットが見込まれ、30ノット以上の範囲は、低気圧の南西側半円で1500海里と北東側よりも広いということです。


⑤ 海上暴風

⑥ 18

⑦ 50

⑧ 南西

⑨ 1500


■⑩は850hPa天気図で矢羽根を読み取るだけ

<学習のヒント>どこの矢羽根を読み取るかは、問題文をよく読むこと


850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図
画像9)図3 850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図(赤×印は地上の低気圧中心)

「秋田沖の低気圧周辺」とはどの範囲のことか?は、本文中にある「南西風」と「暖気移流場」がヒントになります。低気圧の中心に対して南西風で暖気移流場になっているのは、上図の赤丸の範囲内の風です。すると、40ノットが最大であることが分かります。


⑩ 40


第62回試験の実技問1(1)穴埋め問題はいかがでしたでしょうか。

現在天気はややこしい箇所がありますね。ここはしっかり暗記しておきたいところです。

問1(1)を極めるだけでもかなり力がつきますので、しっかりインプットしておきましょう。

次回もお楽しみに!



この記事を書いた人

TeamSABOTEN気象予報士スクール

気象予報士・防災士 佐々木恭子



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