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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第60回気象予報士試験<実技1>

TeamSABOTENのスクール講師・佐々木恭子です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第60回気象予報士試験の実技の問1解説です。実技1は2021年1月7日~8日の事例で、冬型の気圧配置へ移行していく形です。


■第60回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)


 7日9時の日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑪ )に入る適切な数値または語句を答えよ。ただし、②⑥⑦⑧は漢字、④は16方位、⑤は符号と単位を付した数値、⑨⑩は十種雲形を漢字で、⑪は下の枠内から1つ選び答えよ。


図1によると、日本海中部には前線を伴って発達中の1000hPaの低気圧があり、( ① )ノットの速さで東北東に進んでいる。この低気圧に対して( ② )警報が発表されており、低気圧中心の南西側1100海里以内と北東側900海里以内では、最大で( ③ )ノットの風が吹いている。また、三陸沖には2つの低気圧があってともに( ④ )に進んでおり、関東の東にも低気圧があって東に進んでいる。

図2(下)によると、700hPa面では、日本海中部の低気圧と三陸沖の2つの低気圧ともに、低気圧の中心付近から進行方向前面で上昇流が強く、その値は最も強い所で( ⑤ )である。850hPa面では、三陸沖の2つの低気圧の進行方向前面で( ⑥ )移流が、日本海中部の低気圧の進行方向後面で( ⑦ )移流が明瞭となっている。

図3によると、日本海中部の低気圧と三陸沖の2つの低気圧ともに、低気圧の中心付近から北側を中心に明白色の( ⑧ )の高い雲域が広がっている。また、寒冷前線西側の日本海から黄海付近にかけて対流雲が広がっており、図1によると日本海西部のウルルン島では、全雲量は8分量の7で、雲の種類は( ⑨ )と( ⑩ )、天気は( ⑪ )しゅう雪となっている。


選択肢

⑪ ( 弱い 並の 強い )


■①と④はともに低気圧の進行の読み取りだが、2つはちょっと違う

(①~④について)

<学習のヒント>付記された低気圧や台風の情報は読めるようにしておこう


地上天気図
画像1)図1 地上天気図

日本海中部の低気圧については速度が、三陸沖の2つの低気圧については進行方向が問われています。「2つはちょっと違う」とは、問われていることが違うという意味ではありません。


日本海中部の低気圧には、この後の②で問われている海上警報が発表されています。

海上警報の種類
画像2) 実況天気図に表示される全般海上警報(気象庁HPより)

日本海中部の低気圧には[SW]という記号が付いています。これは、海上暴風警報が発表されているという意味です。

低気圧に対して発表される海上警報は、その低気圧により低気圧周辺海域で注意・警戒すべき風が吹いている(吹くと予想される)ということで、[SW]海上暴風警報以上になっている(なると予想される)低気圧や台風では、天気図の空いている所に中心位置や移動方向、移動速度、強風が吹いている範囲などの詳細な情報が付記されます。簡単な英語で書かれていますので、読み取れるようにしておきましょう。


低気圧の情報
画像3) 日本海中部の低気圧についての情報(地上天気図の一部拡大)

日本海中部の低気圧について

DEVELOPING LOW 発達中の低気圧

[中心気圧] 1000hPa

[中心の緯度経度] 北緯40°、東経135°

[進行方向・速度] 東北東 30ノット

[30~50ノットの風が吹く範囲] 1100海里 南西側半円

              900海里 北東側半円

※問題に関わる所を黄色ハイライトにしています


一方、三陸沖の低気圧には海上警報が発表されていません。このような場合は、低気圧の中心近くに置かれている白抜きの矢印の方向と速度を読み取ります。


16方位の角度
画像4)16方位の角度は22.5°ずつ(北北東~東まで記入)

低気圧の進行方向 白抜き矢印 読み取り方
画像5)低気圧の移動方向を示す白抜きの矢印の読み取り方

16方位の角度は、北(360°)から22.5°ずつ北北東→北東→東北東…となっています。ですから、例えば「北北東」は[11.25°~22.5°~33.75°]となります(画像4)。分度器は持ち込めませんので、これを厳密に測り取ることはできませんし、意味はありません。そこで、白抜きの矢印で進行方向を読み取る場合は、矢印からまっすぐ経度線まで線を伸ばして大体の角度を確認します。持ち込み可能な定規に、升目が付いているものだとさらに分かりやすいですね。または、三角定規も持ち込み可能なので、ざっくりと角度を読み取れます(画像5)。


上記の方法で角度が微妙だと思ったら、それは模範解答にも幅が設けられている可能性があります。多くの時間をかける必要はありません。※こちらの問題も東北東(北東)と幅があります。


① 30

② 海上暴風

③ 50

④ 東北東(北東)


■⑤~⑦は850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図の読み取り

<学習のヒント>地上低気圧や前線の位置をプロットすると間違いがなくなる


850hPa気温・風 700hPa鉛直流 解析図
画像6)850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図(赤×印は地上低気圧の中心位置)

日本海の低気圧は発達中で「進行方向前面で上昇流が強い」ということなので、低気圧の発達に関与する上昇流の極値のうち、最も強い所を読み取ります。このとき、「⑤は符号と単位を付した数値」で答えるという条件を忘れずに。また、この700hPaの鉛直流と併せて、850hPaでは低気圧の進行方向前面で暖気移流(最大値は日本海で30ノットの南西風、三陸沖では35ノットの南風)、日本海中部の低気圧の進行方向後面で寒気移流(40ノットの西北西風)が明瞭です。


⑤ -113hPa/h

⑥ 暖気

⑦ 寒気


■⑧は気象衛星画像の読み取り

<学習のヒント>赤外画像で明白色の雲域は温度(輝度温度)が低い領域


気象衛星 赤外画像
画像7)気象衛星赤外画像(赤×印は地上低気圧の中心位置)

気象衛星画像でも、地上天気図で注目する低気圧の中心は画像にプロットしてあげると、読み取りやすい上に間違いが少なくなります。


日本海中部の低気圧も三陸沖の低気圧もともに、中心から北側にかけて「真っ白」な雲域になっています。赤外画像ではこのような色について「明白色」という言葉を使います。

赤外画像で明白色ということは、温度(輝度温度)が低く、高い高度にある雲であることを示しています。


⑧ 雲頂高度(雲頂)


■⑨~⑪は天気記号の読み取り

天気記号 実況
画像8)ウルルン島の実況

最初に何度でも言いますが、地上気象観測の雲量の観測は全天を10として雲の占める割合を13段階で示す「10分雲量」です。文章中にある「8分量(もしくは8分雲量というときもある)」は、気象予報士試験のみで使用されているものです。「ウルルン島では、全雲量は8分量の7で」とあるのは、地点円の右下にある数字を読み取っています。


雲量の記号 8分量
画像9)雲量の記号(気象庁HPに加筆)

ウルルン島の雲量の実際の意味は…

下層雲(層積雲と積雲)の雲量は、7番(符号)で示される「雲量9~10マイナス」である

ということです。


また、⑪は天気の強さを選択することになっていますので、地点円の左側にある[現在天気]の記号を読み取ります。


国際式の天気記号で用いられる現在天気は、全部で100種類(記号があるものは96種類)あります。降水に関するものから、強さの違いなども含めて覚えておきましょう。

ウルルン島の現在天気は、85番の「弱いしゅう雪」です。


天気記号 国際式
画像10)現在天気の天気記号(気象庁HPより)
天気記号 番号
画像11) 天気記号85番(気象庁HPより)

⑨ 層積雲

⑩ 積雲

⑪ 弱い

※⑨⑩は順不同


第60回実技2も、ぜひご覧ください。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN気象予報士スクール

気象予報士・防災士 佐々木恭子



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