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【実技の問1虫食い問題かんたん解説】第57回気象予報士試験<実技1>

TeamSABOTENのスクール講師・佐々木恭子です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく解説します。

問1(1)は、まずはどんな事例かを大きく把握するための大事な1問です。第57回気象予報士試験の実技1は梅雨の時期で、前線上の低気圧が発達していく事例です。


■第57回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)

地上天気図
画像1)図1 地上天気図

 日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑪ )に入る適切な数値または語句を答えよ。ただし、③⑪は漢字で、⑤は十種雲形を漢字で、⑥は下枠の中から適切な語句を選んで答えよ。


地上天気図によると、九州の南西海上に中心気圧( ① )hPaの低気圧があって、東北東に( ② )ノットで進んでおり、低気圧から前線がのびている。この低気圧に対して( ③ )警報が発表されている。また、東シナ海、黄海、日本海および日本の東では海上濃霧警報が発表されており、これらの海域では視程が概ね( ④ )海里以下となっているか、24時間以内に概ね( ④ )海里以下になる濃霧が予想されている。

この低気圧の北東に位置する鹿児島では、下層で( ⑤ )が観測されており、21時現在の天気は( ⑥ )となっている。


500hPa面の高度・渦度解析図では、地上低気圧中心のすぐ西に( ⑦ )×10-6(マイナス6乗)/sの正の渦度極大値がある。また、地上の低気圧に伴う850hPa面の温暖前線は、概ね( ⑧ )℃と( ⑨ )℃の等温線の間にある。


気象衛星赤外画像では、地上低気圧の中心の北側に輝度温度の( ⑩ )い発達した対流雲がみられ、寒冷前線の南側にも対流雲がみられる。低気圧の進行方向前面の雲域はバルジ状を呈しており、その南端のすぐ西には、地上低気圧に伴う前線の( ⑪ )点が存在する。


選択肢

⑥( 弱いしゅう雨 並または強いしゅう雨 曇り 弱い雨 並の雨 晴れ )


■①②は低気圧の中心気圧、移動を読み取る

低気圧の中心気圧については、中心の近くにある数字を読み取り、移動については白抜きの矢印の向きで方向、白抜きの矢印の近くにある数字(KT・ノット)で速度を読み取ります。

中心気圧は992hPa、東北東に20ノットで進んでいる、と読み取ることができます。


① 992

② 20


■③④は海上警報を解答する

<学習のヒント>全般海上警報は必ず出題されます。「どれが出やすい」といった傾向はありませんので、必ず全て、発表基準までしっかり暗記しておきましょう。

海上警報の種類
画像2)海上警報(気象庁HPより)

問題では、低気圧に対して発表されている[GW]海上強風警報についてと、東シナ海、黄海、日本海および日本の東という広範囲に発表されているFOG[W]海上濃霧警報について問われています。海上濃霧警報は、濃霧によって海上の視程が0.3海里以下に(現在)なっているか、24時間以内にその基準に達すると予想される海域に発表されます。この「以下」を、「未満」と間違えて解答するケースがよくみられます。要注意です。

また、今回は海上強風警報の発表基準については問われませんでしたが、「最大風速34ノット以上48ノット未満」という発表基準は反射的に答えられるくらい頭に叩き込んでおきましょう。


③ 海上強風

④ 0.3


■⑤⑥は天気記号の読み取り

鹿児島の実況 天気記号
画像3)鹿児島の実況

⑤は観測された下層雲の種類は、地点円の下に描かれいている記号(画像?国際式天気記号の「CL」)を読み取ります。2段重ねのアイスクリームみたいな記号は「積雲」です。


国際式天気記号
画像4) 国際式天気記号(気象庁HPより)

⑥は観測時の天気です。現在天気によると、「弱いしゅう雨」の右側にカギカッコ( ] )がついています。枠内の選択肢の中から「弱いしゅう雨」を選んでしまいそうになりますが、20番~29番の、カギカッコ( ] )付きの記号は観測時前1時間内に観測所に降水,霧,氷霧又は雷電があったが,観測時にはない場合に用いられる記号です。つまり、観測時刻には雨は降っていないということです。

したがって、天気は地点円に示される雲量から判断することになります。雲量は9~10-(マイナス)で、観測時の天気は「曇り」となります。


天気記号  現在天気
画像5) 現在天気(気象庁HPより)
現在天気 25番
画像6)天気図記号(現在天気)の解説(25番)

⑤ 積雲

⑥ 曇り


■⑦~⑨は、解析図から渦度と等温線を読み取る

<学習のヒント>上空の天気図には、同時刻の低気圧の中心をプロットすると間違いがない


500hPa高度渦度 解析図
画像7) 500hPa高度・渦度解析図(赤×印は地上低気圧の中心)

「地上低気圧のすぐ西」にある正渦度極大値といわれて、2枚の天気図をバラバラに見ると、試験中はうっかり低気圧の位置を間違えて、誤った渦度や等温線を解答してしまう可能性があります。ひと手間ですが、地上低気圧の中心を上空の天気図にプロットしてあげるだけで、ミスは減らせます。トレーシングペーパーなど使わず、大体の位置に印をつける程度で大丈夫です。

すると、地上低気圧のすぐ西側に+166の正渦度極大値があることが読み取れます。


850hPa気温風 700hPa鉛直流 解析図
画像8) 850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図(赤×印は地上低気圧の中心)

温暖前線に対応する850hPaの等温線は、等温線の集中帯の南縁と考えると18℃線になります。しかし、風の分布では18℃線に接する、もしくは18℃線を超えて、南南西や南西の風が吹いています。そのため、温暖前線に対応する等温線は18℃線と判断するよりも、15℃線と18℃線の間にあると考えられます。


⑦ 166

⑧ 15

⑨ 18 ※⑧と⑨は順不同


■⑩⑪気象衛星赤外画像の読み取り

<学習のヒント>気象衛星画像はよく出題されるので、気象衛星センターのHPで雲パターンについて学んでおくこと

気象衛星センター
画像8) バルジの解説 気象衛星センターより

赤外画像
画像9) 気象衛星赤外画像

問題文にある通り、地上低気圧の中心北側には先端の尖ったにんじん状の雲が見られ(画像9の赤丸部分)、「発達した対流雲」域であることがわかります。発達した対流雲ということは、雲頂高度が高く、雲頂の温度は低いと考えられます。つまり、輝度温度が低いということです。

また、低気圧の進行方向前面の雲域は、北縁に高気圧性曲率がみられる「バルジ状」を成し、低気圧が発達していることを示しています。そのバルジの南端にはあまり特徴的な雲は見られませんが、地上天気図から判断すると、そこは閉塞点にあたります。


⑩ 低

⑪ 閉塞



第57回気象予報士試験の実技1問1(1)の解説、いかがでしたか。

実技試験は時間との勝負と言われますが、低気圧の中心をプロットするひと手間は、決してタイムロスではありません。ぜひ、やってみてください。



この記事を書いた人

気象予報士スクール講師 気象予報士・防災士 佐々木恭子



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