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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第56回気象予報士試験<実技1>

こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・奥田純代です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第56回気象予報士試験<実技1>。東シナ海から西日本、東日本へと低気圧が発達しながら進む事例です。


■第56回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)


地上天気図
画像1)図1 地上天気図(着目する情報に赤い四角、海上警報に黄色い四角を加筆)

 日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑮ )に入る適切な語句または数値を答えよ。ただし、①⑫は16方位を、③④は10種雲形を漢字で、⑦⑧は符号を付して、⑩は鉛直流の値を符号と単位を付して答えよ。

 

 地上天気図によると、東シナ海に中心気圧1006hPa の低気圧があり、( ① )に( ② )ノットで進んでいる。低気圧からのびる前線の北側に位置する名瀬および鹿児島の地上観測によると、下層は( ③ )や( ④ )に覆われている。前線の南側にあたる石垣島の地上観測によると、観測時刻の1時間前から( ⑤ )時間前の過去天気は( ⑥ )である。名瀬および鹿児島の前3時間の気圧変化量は、それぞれ( ⑦ )hPa、( ⑧ )hPa である。一方、日本の東には優勢な高気圧があり、東南東へ10ノットで移動している。

 500hPa 天気図によると、華南の東経 115゜付近にトラフがあり、そのトラフの東側では、強風軸が概ね( ⑨ )m の等高度線に沿って位置している。

 図3の解析図によると、東シナ海の地上低気圧に伴い700hPa 面では上昇流の最大値( ⑩ )が解析され、低気圧の進行方向前面では850hPa 面で最大( ⑪ )ノットの風が( ⑫ )から吹いており、強い( ⑬ )移流の場になっている。また、850hPa 面の前線は、概ね 12℃と15℃の等温線の間にある。

 東シナ海の地上低気圧に対しては、( ⑭ )警報が発表されている。24時間先までの最大風速は、海上暴風警報の基準値( ⑮ )ノットに達することはないと予想される。



①②は低気圧の進行方向および移動速度の読み取り


東シナ海の低気圧の右斜め上にある表記を読む。

①移動方向は、白抜きの矢印が緯度・経度線に対してどれくらいの角度なのかで方位を読み取る。

※「16方位」で答えるよう指定されている


① 東北東

② 10


③④は雲形の記号から読み取る

<学習のヒント>記号の読み取りはよく出題されるので、しっかり覚えてミスなく解答できるようにしよう


観測実況値の入力形式
画像2)観測実況値の入力形式(気象庁HPより)

観測実況
画像3)各地点の観測実況(鹿児島の下層雲の記号に赤丸を加筆)

雲の状態表
画像4)雲の状態表(下層雲のみ)( 気象庁発行:気象観測の手引き 11.1.5 雲の状態より)

③④鹿児島の下層雲は、全雲量の下にある雲形記号を読み取り、十種雲形を漢字で答えるよう指示されている。 鹿児島の下層雲の記号は、画像4の「雲の状態表」において下層雲の雲の状態を示す[CL-8]に対応しており、その説明より積雲層積雲が共存していることがわかる。


この問いは、雲形の記号とその意味を覚えているのが一番だが、覚えていなくても画像5の「主な雲の形の記号」を覚えていれば推測して答えることができる。 鹿児島の下層雲の記号は、積雲の上に層積雲がのっているため、この2つの雲が存在していること想像できる。


主な雲の形の記号
画像5)主な雲の形の記号(気象庁HPより)

以上より

③ 積雲

④ 層積雲

(③④順不同)


⑤⑥は過去天気の観測期間、記号を読み取る


過去天気の観測期間は、国際気象通報式より「00、06、12及び18UTCは観測時前6時間」となっている。なお、現在天気の観測時刻1時間以内は含まない。このため、問題文では『観測時刻の1時間前から』と表記されている。

過去天気は、全雲量の右下の欄に描かれた記号を読み取る。

記号は[☈]であるため、「雷電」とわかる。

 

過去天気
画像6)過去天気(気象庁HPより)

以上より

⑤ 6

⑥ 雷電


⑦⑧は観測実況から気圧変化量を読み取る


前3時間の気圧変化量は、全雲量の右にある符号を含む数値で示されており、0.1hPa 単位となっている。

よって、名瀬の[-42]は[-4.2hPa]、鹿児島の[-13]は[-1.3hPa]となる(画像3を参照)。


⑦ -4.2

⑧ -1.3


(ここでは問われていないが、石垣島の[-00]は[-0.0hPa]となり、3時間前の気圧と同じであることがわかる。ただし、その右横にある気圧変化傾向を示す記号から前3時間の気圧は一定であったわけではなく、「下降後上昇」していることが読み取れる。気圧変化傾向の記号とその意味も覚えておくとよい。)


⑨は500hPa天気図から強風軸を読み取る

<学習のヒント>周辺に比べて強い風(50ノット以上)が観測されている所に着目する


500hPa天気図
画像7)500hPa天気図(トラフを赤線、高度5760m付近の50ノット以上の風に黄色の楕円を加筆)

トラフの東側で50ノット以上の強い風が観測されている矢羽に印をつけると、おおむね高度5760m付近に沿っていることがわかる。

 

⑨ 5760


⑩~⑬は700hPa・850hPa天気図の観測値を読み取る

<学習のヒント>「移流」を天気図からどのように読み取るのか考えよう


850hPa気温・風 700hPa鉛直流
画像8)850hPa気温・風、700hPa鉛直流解析図(地上低気圧の位置に✕印、着目する上昇流に赤楕円、風に黄色の楕円を加筆)

⑩低気圧に伴う700hPa面の上昇流の最大値は、地上低気圧中心の北側にある「-121hPa/h」(画像8の赤楕円)となる。

上昇流の値は「符号と単位も付して」と指定されていることに注意。

なお、鉛直流の単位は図の説明にも表記している。


⑪⑫低気圧の進行方向前面における850hPa面の最大風は、「40ノット・南南東」の風(画像8の黄色い楕円)である。


⑬移流は、等温線に対して風が暖気側から寒気側に吹いている場合は「暖気移流」、寒気側から暖気側に吹いている場合は「寒気移流」となる。

⑪⑫で着目した風は、暖気側から寒気側に風が吹いているため「暖気移流」である。

なお、移流の強さは、等温線に対して大きい角度かつ強い風で吹き込んでいるほど「強い」と判断できる。


⑩ -121hPa/h

⑪ 40

⑫ 南南東

⑬ 暖気


⑭⑮は海上警報の読み取り

<学習のヒント>記号の意味と定義をしっかり覚えよう


海上警報の種類
画像9)全般海上警報(気象庁HPより)

東シナ海の低気圧には[GW]の記号が付記されている。これは海上強風警報が発表されていることを意味する。

⑮は海上強風警報の風速を海上暴風警報の基準値を使って説明している。

海上警報の基準は、「未満」や「以上」なども含めて正しく覚えよう


⑭ 海上強風

⑮ 48


第56回試験の実技1問1(1)穴埋め問題はいかがでしたか。

他の回の穴埋め問題に比べると今回は15問と多めです。ここでしっかり点数を獲得しましょう。

次回は実技2です。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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