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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第55回気象予報士試験<実技2>

更新日:1 日前

こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・奥田純代です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第55回気象予報士試験<実技2>。2015年4月29日~30日にかけて、寒冷渦により九州で大気の状態が不安定となった事例です。


■第55回気象予報士試験<実技2>

実技2問1(1)


地上天気図
画像1)図1 地上天気図(着目する情報に赤い四角、海上警報に黄色い四角を加筆)

 日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )〜( ⑫ )に入る適切な語句または数値を答えよ。ただし、①は16方位、③⑤⑥⑪⑫は漢字、④は符号を付した数値で答えよ。

 

 地上天気図によると、伊豆諸島付近には低気圧があって( ① )へ( ② )ノットで進んでいる。この低気圧から( ③ )前線が東西にのびており、西端は石垣島付近に達している。この前線付近の那覇では前3時間の気圧変化量が( ④ )hPa、下層雲は( ⑤ )と( ⑥ )が観測されており、観測時の( ⑦ )時間前から1時間前までの過去天気は( ⑧ )である。

 

 一方、黄海には別の低気圧があってほとんど停滞している。300hPa 天気図によると、黄海の低気圧の周りを囲むように強風軸が大きく( ⑨ )している。このようなときは、地上のじょう乱の動きは遅いことが多い。500hPa 天気図では、黄海の低気圧の中心付近の気温が周りと比較して( ⑩ )くなっており、このような低気圧は( ⑪ )と呼ばれている。

 

 東シナ海から、黄海、日本海、北日本の太平洋側にかけての広い範囲に( ⑫ )警報が発表されている。


①②は低気圧の進行方向および移動速度 ③は前線の種類の読み取り


伊豆諸島付近にある低気圧の中心の右側にある表記(画像1の赤い四角内)から進行方向と移動速度を読み取る。

①低気圧の移動方向は、白抜きの矢印が緯度・経度線に対してどれくらいの角度なのかを読み取る。

16方位」で答えるよう指定されており、この問いでは白抜きの矢印が真東よりは少し東北東側に向いている。このため解答は「東北東」または「」、どちらとも正解となっている。 このように、どちらともとれるような微妙な方位の場合は、解答も幅を持たせて“どちらとも正解”とすることが多い。あまり悩まず、自分が読み取った方位を答えよう。

③前線の種類は、「漢字」で答えること。

 

以上より

① 東(東北東でも正解)

② 10

③ 停滞


④は気圧変化量を読み取る


観測実況値の入力形式
画像2)観測実況値の入力形式(気象庁HPより)
観測実況
画像3)那覇の観測実況(気圧変化量と気圧変化傾向に青四角、下層雲の記号に赤丸、過去天気に黄色波線の四角を加筆)

気圧変化量は、全雲量の記号の右側にある符号を含む数値(画像3の左側の青四角)で示されており、0.1hPa 単位となっている。

よって、気圧変化量 [+09]は[+0.9hPa]である。 問題文に「符号を付した数値で」と指定があるため、符号も忘れずに付けよう。


④ +0.9

 

今回は問われていないが、気圧変化量の右に描かれている気圧変化傾向(画像3の右側の青四角)についても問われることがあるため、記号とその意味も覚えよう。

ちなみに、那覇の気圧変化傾向は「上昇後一定 または上昇後緩やかに上昇」である。


⑤⑥は雲形の記号を読み取る


雲の状態表
画像4)雲の状態表(下層雲のみ)( 気象庁発行:気象観測の手引き 11.1.5 雲の状態より)
雲形 記号
画像5)主な雲の形の記号(気象庁HPより)

⑤⑥那覇の下層雲は、全雲量の下にある雲形記号を読み取り、漢字で答えるよう指定されている。 那覇の下層雲の記号は、画像4の「雲の状態表」において下層雲の雲の状態を示す[CL-8]に対応しており、その説明より積雲層積雲が共存していることがわかる。


この問いは、雲形の記号とその意味を覚えているのが一番だが、覚えていなくても画像5の「主な雲の形の記号」を覚えていれば推測して答えることができる。 那覇の下層雲の記号は、積雲の上に層積雲がのっているため、この2つの雲が存在していると想像できる。

 

以上より

⑤ 積雲

⑥ 層積雲

(⑤⑥順不同)


⑦⑧は過去天気の観測期間、記号を読み取る


過去天気
画像6)過去天気(気象庁HPより)

⑦過去天気の観測期間は、国際気象通報式より「00、06、12及び18UTCは観測時前6時間」となっている。なお、現在天気の観測時刻1時間以内は含まない。このため過去天気は、問題文のように『観測時の6時間前から1時間前まで』となる。

⑧過去天気は、全雲量の右下の欄に描かれた記号(画像3の黄色波線の四角)を読み取る。

記号▽は、「しゅう雨性降水」となる。

過去天気はよく問われるので、しっかり覚えておこう。

 

以上より

⑦ 6

⑧ しゅう雨性降水


⑨は300hPa天気図の強風軸を解析して読み取る

<学習のヒント>等風速線の分布と矢羽から風速の大きいところに着目して強風軸を解析する


300hPa天気図 強風軸
画像7)300hPa天気図(矢印付き青線で強風軸を加筆)

黄海にある低気圧の周りを囲むような強風軸がどうなっているのか?を問われているので、強風軸を解析してみる。

300hPa天気図には等風速線(画像7の天気図内の波線)が描かれているので、周りよりも風速が大きい等値線の形状旗矢羽を参考に強風軸を描いてみる。すると、画像7の矢印付き青線で示す通り、2本解析することができる。そのうち、北側にある低気圧の周りを囲む強風軸は、低緯度側に膨らむように蛇行わん曲)しているのがわかる。

 

以上より

⑨ 蛇行(わん曲でも正解)


⑩⑪は500hPa天気から低気圧の特徴を読み取る

<学習のヒント>偏西風から切り離された低気圧の中心付近に寒気核を伴っていることから、寒冷渦であることに気づこう


500hPa天気図
画像8)500hPa天気図(低気圧中心を示すLを赤字、寒気核を示すCを青字、済州島の観測値に青四角を加筆)

⑩500hPa天気図において、黄海の低気圧の中心付近の気温を読み取り、周辺と比較する。

なお、観測地点付近に書かれている数値は、上段が気温下段が湿数である。

低気圧の中心に最も近い観測地点は済州島で、気温は-15.7℃となっており、周辺と比較すると低くなっていることがわかる。 このように上層ほど低気圧性循環が明瞭で中心付近に寒気を伴った低気圧を「寒冷低気圧」または「寒冷渦」という。

 

⑩ 低

⑪ 寒冷低気圧(寒冷渦でも正解)


⑫は海上警報の読み取り

<学習のヒント>海上警報は毎回出題されているので、定義までしっかり覚えよう


海上警報の種類
画像9)全般海上警報(気象庁HPより)

東シナ海から黄海、日本海、北日本の太平洋側にかけて FOG[W] という記号が付いている(画像1を参照)。これは、海上濃霧警報が発表されているという意味である。

海上濃霧警報の基準についても出題されることもあるため、併せて一緒に覚えよう。


以上より

⑫ 海上濃霧


海上警報は、画像9に示されている現象が発生しているか、24時間以内に発生すると予想される場合に発表されることも忘れずに覚えておこう。 ※詳細は気象庁HPの「海上警報・予報」のページを参照


第55回試験の実技2問1(1)穴埋め問題はいかがでしたか。

寒冷低気圧(寒冷渦)の鉛直構造などの特徴は学科で学習する内容なので、しっかり復習をしてもらさず得点できるようにしましょう。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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