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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第54回気象予報士試験<実技2>

こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・奥田純代です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第54回気象予報士試験<実技2>。2015年8月24日~26日にかけて、台風が九州を縦断して日本海で温帯低気圧となる事例です。


■第54回気象予報士試験<実技2>

実技2問1(1)

地上天気図
画像1)図1 地上天気図(台風の情報に赤枠、赤および青マーカーを加筆)

 24日21時の日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑫ )に入る適切な語句または整数値を答えよ。ただし、①④は16方位、②⑦は1の位の数字を四捨五入した10の倍数で、⑧⑩⑫は下の枠内からそれぞれ1つ選んで答えよ。なお、地上天気図において、鹿児島の位置は鹿児島の地点円の中心とする。

 

 地上天気図によると、非常に強い台風が九州に接近中である。台風の中心は、鹿児島の ( ① )およそ( ② )km の位置にあり、( ③ )ノットの速さで( ④ )へ進んでいる。台風がこの速度を維持すれば、中心が鹿児島に最も近づくのは25日の( ⑤ )時頃とみられる。

 地上天気図で、この台風の最も外側にある閉じた等圧線の値は( ⑥ )hPaであり、その半径は中心の南東側で約( ⑦ )海里である。この台風により15m/s以上の強風が吹いている可能性のある領域は、中心の南東側より北西側で( ⑧ )。


 沿海州北部の沿岸には、中心気圧が( ⑨ )hPaの高気圧があって北日本を覆い、一部は関東地方に張り出している。関東地方から小笠原諸島の西にかけては南北にのびる気圧の( ⑩ )となっており、それを北から南へたどっていくと、東よりの風が西よりの風に変わるところがある。その部分を気圧の( ⑪ )といい、そこでの気圧は1010hPa より( ⑫ )。

 

選択肢

⑧ ( 広い  狭い )

⑩ ( 尾根  谷  )

⑫ ( 高い  低い )


①②は台風の位置について方角の読み取りと距離を計算

<学習のヒント>[緯度10°=600NM(海里) もしくは 1110km]は、必ず覚えておこう


長さを測って距離を求める方法
画像2)図1の地上天気図の拡大図(計測結果を加筆)

①は、台風の中心が鹿児島から見てどの方角にあるかを読み取る。

鹿児島から台風の中心はちょうど東経130°線をまたいでおり、この経度線に対してどれくらいの角度になっているのかを読み取る。

なお、「16方位」で答えるよう指定されている。

②は、鹿児島から台風の中心までの距離を、天気図上で以下の2つの長さを測り、計算で求める。

 

  • 鹿児島から台風の中心まで: 1cm

  • 北緯20°~40°の間   : 8cm

    (鹿児島から台風の中心は緯度30°線をまたいでいるため、高緯度側もしくは低緯度側の緯度10°分の長さよりも、緯度20°~40°の緯度20°分の長さを使うと間違いがない。)

 

[緯度10°= 1110km] であるから、鹿児島から台風の中心までの距離は


1110×2×1/8 = 277.5 ≒ 278 km


となる。

さらに、「一の位を四捨五入した10の倍数」で答えるよう指定されているため、「280km」となる。

 

天気図上で計測した長さの値(1cmと8cm)は、図の印刷によって多少異なることもあるかもしれないが、計測した2つの長さの比は変わらないため、解答も変わらない。

天気図上で正確に計測すれば、あと簡単な計算で求められる。

 

① 南西

② 280


③④は台風の情報から読み取る

<学習のヒント>台風の情報は、ささっと読めるようにしよう


③の速度と④の進行方向は、台風の情報の赤でマークした部分を読み取ればよい(画像1を参照)。


③ 20

④ 北東


⑤は、③と②を利用した計算問題

<学習のヒント>速度と距離がわかっているため時間は求められるが、簡単な計算でミスなく解く方法でもとめよう


②で解答した鹿児島から台風の中心までの距離は280kmであり、これを用いてかかる時間を求めるには③で解答した台風の速度20ノットの単位を[km/h]に変換しなければならない。この計算は面倒なため、もっと簡単に計算をする。

 

速度20ノットとは、1時間に20海里進んでいることを意味する。

よって、鹿児島から台風の中心までが何海里なのかがわかれば、かかる時間を計算することができる。

②で計測した鹿児島から台風の中心までの長さ(1cm)と,、緯度20°分の長さ(8cm)を利用する。

緯度20°分は1200NM(海里)なので([緯度10°=600NM(海里) もしくは 1110km]より)、

鹿児島から台風の中心までの距離[NM]は、


 1200×1/8=150[NM]


となる。

これより、かかる時間は、


 150/20=7.5[h]


約8時間となる。

以上より、⑤は24日21時の8時間後の25日5時頃となる。

 

⑤ 5


⑥⑦は地上天気図から読み取る

<学習のヒント>距離を海里で求める際は、いちいち単位を[km]には直さない。これまでの問題で使用した値を使って解く


⑥は、沿海州付近に見られる1020hPaの太実線から数えればよい。

⑦中心から南東側の1000hPaまでの距離(半径)は、天気図上で計測して求める。

その長さは1.2cmであった。

⑤で算出した「鹿児島から台風の中心までの長さ1cm=150NM」を利用すると、求める半径は、


 150×1.2=180[NM]


となる。

 

⑥ 1000

⑦ 180


⑧は台風の情報を読み取り

<学習のヒント>台風の情報は、ささっと読めるようにしよう


風速15m/s以上の強風域の範囲は、台風の情報の水色でマークした部分を読み取ればよい。

 

[OVER 30 KT WITHIN 210 NM SE-SEMICIRCLE

                          150 NM ELSEWHERE]

30ノット以上の強風半径 南東側半円で210海里 その他(北西側)の半円で150海里

 

なお、⑧に入る語句は選択肢の中から答えるよう指定がある。


⑧ 狭い


⑨~⑫は地上天気図から読み取る

<学習のヒント>等圧線の補助線が描かれている所は、4hPa毎の等圧線だけでは表現できない気圧分布をわかりやすくしている注目すべきポイント

気圧の鞍部
画像3)図1の地上天気図の拡大図(大気の流れを示す矢印、気圧の尾根、鞍部を加筆)

⑨以降は、沿海州北部付近にある高気圧についてで、⑩と⑫は選択肢の中から選ぶ。


⑨中心気圧は、中心を示す✕印のすぐ外側を囲む等圧線の値を読む。

⑩関東から小笠原諸島の西にかけて等圧線の補助線がのびており、周辺よりも気圧が高く、「気圧の尾根」となっていることがわかる。

⑪⑫問題文の『それ(気圧の尾根)を北から南へたどっていくと、東よりの風が西よりの風に変わるところがある』について、地上天気図の気圧配置から大気の流れを考えてみる。

気圧の尾根の北から南にかけて周辺の大まかな大気の流れは、画像3の緑の矢印のように推測できる。

北側の気圧の尾根から南へ向かうと、北緯30°付近で東成分から西成分を含む流れに変わる。

ここは、北と南に気圧の尾根があり、その間で少し気圧が低くなっている所とわかる。

このように、尾根と尾根の間で緩やかに気圧が低くなっている部分を「気圧の鞍部」という。


⑨ 1020

⑩ 尾根

⑪ 鞍部

⑫ 低い


第54回試験の実技2問1(1)穴埋め問題はいかがでしたか。

地上天気図上で長さを測る作業や計算が多めでしたが、緯度と距離、海里の関係をしっかり理解していれば、簡単な計算で解くことができます。

計算問題が苦手な方は、類似問題をたくさん解いて、反復練習でミスなく解答できるようにしましょう。

計算問題の攻略にオススメなのが「試験で点をとる講座」の①③④⑥です。

よろしければご活用ください。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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