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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第54回気象予報士試験<実技1>

こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・奥田純代です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第54回気象予報士試験<実技1>。2016年1月29日~30日にかけて、南岸低気圧により広い範囲で雨が降り、関東北部では積雪となった事例です。


■第54回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)

地上天気図
画像1)図1 地上天気図(着目する情報に赤枠、海上警報に黄色の四角を加筆)

 日本付近の気象概況について述べた次の文章の空欄( ① )~( ⑮ )に入る適切な語句または数値を答えよ。ただし、④⑧、⑤⑦、および⑥⑨⑩は、下のそれぞれに対応する枠の中から適切な語句を選んで答えよ。

 

 地上天気図では、九州に中心気圧1018hPa の低気圧があって、( ① )に( ② )ノットの速さで進んでいる。この低気圧の中心から華南および東海道沖にかけて停滞前線がのびており、この前線周辺の南シナ海、東シナ海、東海道沖、および関東の東の海上では、( ③ )警報が発表されている。

 前線の北にある松江では、中層及び下層の雲は( ④ )が主となっており、前1時間内に止み間が( ⑤ )( ⑥ )が観測されている。また、前線の東北東に位置する東京では前1時間内に止み間が( ⑦ )( ⑥ )が観測されている。一方、前線の南にある鹿児島と名瀬では、いずれも下層で( ⑧ )が観測されており、天気は、鹿児島では( ⑨ )、名瀬では( ⑩ )となっている。

 前線に対応するように、500hPa 天気図では概ね、( ⑪ )mから( ⑫ )mにかけての等高度線に沿って強風軸がみられる。また、850hPa 気温・風、700hPa鉛直流解析図によると、九州から台湾海峡にかけて、500hPa の( ⑫ )mの等高度線のすぐ南側に沿って( ⑬ )の大きな領域が連なっており、この付近の 850hPa では( ⑭ )℃と( ⑮ )℃の等温線の間隔が狭くなっている。


選択肢

④⑧( 層状雲 対流雲 波状雲 )

⑤⑦( ある ない )

⑥⑨⑩(弱いしゅう雨 並または強いしゅう雨 強いしゅう雨

    弱い雨 並の雨 強い雨 )


①②は低気圧の近くに記されている情報を読み取る


①移動方向を示す矢印は緯度線とほぼ平行なため、移動方向は「」とわかる。

②低気圧の速度は、「15KT」と記されているため「15ノット」となる。

 

① 東

② 15


③は海上警報の読み取り

<学習のヒント>海上警報の問いは高頻度で出題されているので、記号の意味と定義をしっかり覚えよう


海上警報の種類
画像2)全般海上警報(気象庁HPより)

③南シナ海や東シナ海、関東の東海上にはFOG[W] という記号が記され、東海沖から関東の東海上の領域は波線で囲まれいる(画像1を参照)。これは、海上濃霧警報が発表されているという意味である。

海上濃霧警報の基準についてもよく出題されるため、併せて一緒に覚えておこう。

 

③ 海上濃霧


④~⑩は観測実況から読み取る

<学習のヒント>観測実況のそれぞれの記号の意味は、資料を見ずに答えられるようにしよう


観測実況値の入力形式
画像3)観測実況値の入力形式(気象庁HPより)
観測実況
画像4)各地点の観測実況(着目する雲形の記号に赤丸、現在天気に水色の枠を加筆)
主な雲の形の記号
画像5)主な雲の形の記号(気象庁HPより)
現在天気の記号
画像6)現在天気の記号(気象庁HPより)
現在天気 しゅう雨
画像7)現在天気の記号の解説(気象庁HPより)

④⑧は雲形の記号から、⑤⑥⑦⑨⑩は現在天気から判断する。


④松江は中層雲として乱層雲、下層雲として断片層雲断片積雲が観測されているため、どちらにも共通していることを選択肢の中から選ぶと「層状雲」となる。

⑤⑥松江の現在天気の記号[●●]は、「雨、観測時前1時間内に止み間がなかった。観測時に。」であるため、文脈にあった語句を選択肢の中から選ぶと⑤は「ない」、⑥は「弱い雨」となる。

⑦東京の現在天気の記号[●]は、「雨,観測時前1時間内に止み間があった。観測時に。」

であるため、選択肢の中から選ぶと「ある」となる。

⑧鹿児島と名瀬の下層雲は雄大積雲であるため、選択肢の中から選ぶと「対流雲」となる。

⑨鹿児島の天気は、現在天気の記号の意味は「しゅう雨,並又は強」であるため、選択肢より「並または強いしゅう雨」となる。

⑩名瀬の天気は、現在天気の記号は「しゅう雨,弱」であるため、選択肢より「弱いしゅう雨」となる。

 

以上より

④ 層状雲

⑤ ない

⑥ 弱い雨

⑦ ある

⑧ 対流雲

⑨ 並または強いしゅう雨

⑩ 弱いしゅう雨


⑪⑫は500hPa面の強風軸を読み取る

<学習のヒント>地上の前線を描き込み、その北側で強風となっているところに着目しよう


500hPa天気図
画像8)図2 500hPa天気図(下)(地上前線を紫色の実線、風速80ノット以上の矢羽に黄色の丸を加筆)

問題の文章に『前線に対応するように』とあるため、500hPa天気図に地上前線をトレーシングペーパーに写し取って描き込む(画像8の紫色の実線)。

上空の強風軸は、地上前線の北側に位置するため、地上前線の位置より北側で強風となっているところを読み取る。風速80ノット以上の矢羽に印をつけると、強風軸は高度5700m~5760と推測できる。

 

⑪ 5700

⑫ 5760


⑬は700hPa面の鉛直流、⑭⑮は850hPa面の等温線集中帯を読み取る

<学習のヒント>参考にする等高度線を描き込むと、着目すべきことがわかりやすくなる

850hPa気温・風 700hPa鉛直流解析図
画像9)図3 850hPa気温・風,700hPa鉛直流解析図(5760mの等高度線を緑の実線、対象とする領域に赤い楕円を加筆)

⑬は、⑫で解答した高度5760m線を図3に描き込み(画像9の緑の実線)、対象とする領域(画像9の赤い楕円)を見ると、等高度線の南側に沿って上昇流域であり、上昇流の極値が連なっているのがわかる。

⑭⑮は、⑬で解答した上昇流の極値が連なっている領域の850hPa面の等温線をみると、明らかに9℃線12℃線の間隔が狭くなっているのがわかる。

 

以上より

⑬ 上昇流

⑭ 9

⑮ 12

(⑭⑮は順不同)


第54回試験の実技1問1(1)穴埋め問題はいかがでしたか。

記号の読み取りは、しっかり覚えて確実に点数を取りましょう。

上層天気図から読み取る問題も素直に解けば正解が得られるようになっています。

穴埋め問題は全問正解を目指しましょう。

次回は実技2です。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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