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【実技の問1 虫食い問題かんたん解説】第52回気象予報士試験<実技1>

こんにちは。TeamSABOTENのスクール講師・奥田純代です。 このシリーズでは、実技試験の問1で必ず出題される気象概況の虫食い問題について、簡単に、わかりやすく、そして正確に解説します。

今回は、第52回気象予報士試験<実技1>。台風および台風から変わった温帯低気圧により広い範囲で大雨となり、線状降水帯も発生した「平成27年9月関東・東北豪雨」の事例です。


■第52回気象予報士試験<実技1>

実技1問1(1)

地上天気図
画像1)図1 地上天気図

 日本付近の気象概況と予想について述べた次の文章の空欄( ① )〜( ⑪ )に入る適切な数値または語句を答えよ。ただし、⑧は台風の大きさ、⑨は台風の強さを、台風情報で使われる語句で答えよ。⑧⑨に該当する適切な語句がないときは、「なし」と記入せよ。

 

 9日9時の地上天気図では、本州付近に中心気圧が( ① )hPaの台風第XX号があって、( ② )ノットの速さで北西へ進んでいる。中心付近の最大風速は( ③ )ノット、最大瞬間風速は( ④ )ノットで、中心の北東側( ⑤ )海里以内と( ⑥ )側( ⑦ )海里以内では、30ノット以上の強い風が吹いている。この台風の中心は、今後24時間以内に日本海に達する見込みである。また、南鳥島の北には別の( ⑧ )( ⑨ )台風があって北西に進んでいる。

 三陸沖から日本のはるか東にかけては停滞前線がのびていて、北緯40°東経153°付近の船舶Aからの通報によると、海面付近で( ⑩ )が観測されている。

 本州の多くの観測地点では雨となっている。一方、九州から沖縄にかけての観測地点の天気は名瀬を除いて( ⑪ )となっている。


①~⑦は地上天気図に記されている赤枠の台風の情報から読み取る

<学習のヒント>情報の内容は、ささっと読めるようにしよう


台風の情報
画像2)図1地上天気図に付記されている情報部分の拡大図

<赤枠の情報の内容>

[TS XXXX] 台風(Tropical Storm)XXXX号

[DAWNGRADED FROM STS] SEVERE TROPICAL STORMから階級が下がる

[990 hPa] 中心気圧 990hPa

[34.5N 137.1E PSN GOOD] 中心位置北緯34.5°東経137.1°中心位置の推定精度 確実

[NW 14KT] 進行方向 北西 移動速度 14ノット

[MAX WINDS 45 KT NEAR CENTER] 中心付近の最大風速 45ノット

[GUST 65 KT] 最大瞬間風速 65ノット

[OVER 30 KT WITHIN 180 NM NE-SEMICIRCLE 

          90 NM ELSEWHERE] 

 30ノット以上の強風域 北東側半円で180海里

 その他の方向(南西半円)で90海里


なお、「TS」や「STS」は、台風(熱帯低気圧)の国際的な階級である。


台風の階級
画像3)台風(熱帯低気圧)の国際的な階級(気象庁HPより)

台風の中心位置の確度
画像4)台風の中心位置の確度の階級(気象庁HPより)

中心位置の推定精度を示す用語の前にある「PSN」は「POSITION(位置)」の略。 


以上より

① 990

② 14

③ 45

④ 65

⑤ 180

⑥ 南西

⑦ 90


⑧⑨は地上天気図の記されている青枠の台風の情報から読み取る

<学習のヒント>強風域の半径が非対称のときは、半径を平均して台風の大きさを判定しよう


台風の大きさ
画像5)台風の大きさ(気象庁HPより)
台風の強さ
画像6)台風の強さ(気象庁HPより)

⑧台風の大きさは、強風域(風速15m/s以上)の半径で決まり、方向によって半径が異なる場合は平均して判定する

南鳥島の北にある台風の強風域の半径は、情報(画像2の青枠)の以下の部分を読み取る。


[OVER 30 KT WITHIN 240 NM NE-SEMICIRCLE 

          180 NM ELSEWHERE] 

30ノット以上の強風域 北東側半円で240海里

その他の方向(南西側半円)で180海里


強風域の半径が方向によって異なるため、半径を平均すると210NM(海里)となる。

これが台風の大きさの表現(画像5)のうち、どれに当てはまるかを考えればよい。


まず、台風の大きさの表現があるかないかの境界となる500kmを目安に考える。

60NM(海里)は110km(緯度1°分)であるから、これを4倍してみると

240NM(海里)=440km

となり、210NM(海里)は500kmは超えないことが明らかである。

よって、台風の大きさの表現は「なし」となる。


⑨台風の強さは最大風速で決まる(画像6)ため、情報(画像2の青枠)の以下の部分を読み取る。


[MAX WINDS 65 KT NEAR CENTER] 中心付近の最大風速 65ノット


よって、台風の強さは強い」となる。


⑧では210NM(海里)が500km以上かどうかで解答できるため、簡単な計算で判断できるが、kmに変換した値を解答する場合は、1NM(海里)≒1.85kmを使用して計算をする。

この値は覚えておくこと。

 

⑧ なし

⑨ 強い


⑩⑪は観測実況の記号から読み取る

<学習のヒント>記号の意味は、しっかり覚えておこう


観測実況値の入力形式
画像7)観測実況値の入力形式(気象庁HPより)
観測実況
画像8)観測実況(現在天気に水色の枠を加筆)
現在天気
画像9)現在天気の記号(気象庁HPより)
現在天気
画像10)現在天気12番の解説(気象庁HPより)

⑩船舶Aによる観測実況から現在天気の記号(画像8の青枠)を読み取ると、12番の「観測所に地霧または低い氷霧があり、連続している」(画像10)となる。

また、このときの気温は21℃であるため、「地霧」が発生している推測できる。

問題文に『海面付近で』とあるため、解答は「」が妥当ということになるが、個人的には「地霧」でも間違いではないと思う。


⑪は、名瀬を除く九州から沖縄にかけての観測地点の天気を問われているため、図1に記されている観測実況から各地点の天気を判定すればよい。

各地点とも現在天気の記号はないため、全雲量から判定する

鹿児島は全雲量1以下⇒快晴、沖縄県3地点は全雲量2,3⇒晴れとなる。


これより⑪の答えは「晴れ」となるが、厳密に解答しようとすると悩むところである。

気象庁発行の「気象観測の手引き」の「天気の観測」によると、「快晴」と「晴れ」は天気の種類として分けられている(画像11)。

つまり、観測地点の天気は2種類あることになり、設問としてはやや不適切と思われる。


なお、自動観測による天気の観測では「快晴」は使用されないため、鹿児島の観測が自動観測(全雲量の記号○(丸)に△(三角)マークが重なったものが自動観測を意味する)であれば、この問いの答えは「晴れ」で問題はない。


天気の種類
画像11)天気種類表(気象庁発行「気象観測の手引き」p.59より)

 以上より

⑩ 霧

⑪ 晴れ


第52回試験の実技1問1(1)穴埋め問題はいかがでしたか。

ほとんどが記号の読み取りでしたが、台風の大きさや強さの基準から判断して解答する問題もありました。暗記事項はしっかり整理して覚えておきましょう。

次回は実技2です。



この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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