上空の前線を考える③(ジェットストリークの鉛直循環):元気象庁予報官・鈴木和史のコラム(第6号)~気象予報士の知識が高まる わかりやすい解説~
- TeamSABOTEN

- 2025年12月17日
- 読了時間: 5分
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●鈴木和史先生のご経歴
・気象大学校卒業
・気象庁予報課予報官
・気象衛星センター解析課長
・宮崎地方気象台長
・鹿児島地方気象台長
●上空の前線を考える③ジェットストリークの鉛直循環【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第6号
(2022.8.19メルマガ配信 原文のまま)
前回は、東経140°に沿った鉛直断面図からJS(ジェットストリーク)の鉛直構造の特徴をみた。では、こうしたJSの構造は予測可能なものだろうか?(図1)20日21時を対象とした国内航空路予測断面図12時間予報FXJP112(6月20日9時初期値)で、予測をチェックしてみる。

これは、東京から札幌に向かう航空路沿い(図中青実線)の鉛直断面図予想を切り出したものである。前回の高層断面図AXJPとは左右(南北)が逆になっていることに注意。等風速線(細破線)の80kt以上を緑で色塗りした。札幌のやや南の上空250hPa付近に100ktの強風コアがあり、このコアのすぐ下層から、325Kと330kにはさまれた相対的に密な等温位線(赤実線)が仙台付近の550hPaまで傾いていて、これが上空の前線帯にあたる。この前線帯に沿ってVWS(Vertical Wind Shear:鉛直方向の風速差)の大きな領域(桃色破線)が存在し、ここではCATの発生可能性が高い。このように、JSについて、ほぼ適確な予測が行われていた。
さて、本題のJSでの鉛直循環を示そう(図2)。

JSの入口側では暖気側で上昇し寒気側で下降し、JSの出口側では寒気側で上昇し暖気側で下降する鉛直循環が発生する。出口側はその逆の鉛直循環となる。北半球では、地衡風が収束して速度が増す流れ(つまりJSの入口側)では、流れに対し左側に加速するような非地衡風成分の力が働く※。この非地衡風の加速度成分によって、入口側では寒気側に収束、暖気側に発散が生じる。圏界面から上空には空気は移動しないので、対流圏上部で収束部分の空気は下降流となり、発散部分では下層から空気の補充されるので上昇流になるというわけだ。このようなJSに伴う鉛直循環は対流圏上部の現象だから、上層雲の発生を促すかもしれないが、下層の天気に直接影響を与えるものではない。ただし、JSの鉛直循環で上昇流となる場所(入口暖気側や出口寒気側)は、対流を発生させるわけではないが下層で発生した対流活動を強める働きがあると考えられる。
今回はかなり難しい話になったが、要はJSの入口暖気側(Ⅲ象限)と出口寒気側(Ⅰ象限)は、対流を助長する場であることを覚えてほしい。次回は、このJSの鉛直循環に焦点を当てて、先日の山形新潟での大雨を考察してみる。
※「増速場では地衡風の左方向に非地衡風の加速度成分が発生する」ことの筆者の個人的な理解の仕方(図3):地衡風はコリオリ力と気圧傾度力がバランスした状態である(図3
左)。地衡風より強い風が吹くと、その風速に対応したコリオリ力が働くから、地衡風の時のコリオリ力より大きくなる。この時、気圧傾度は変わらないから、気圧傾度力と強まったコリオリ力はバランスが取れなくなる。このバランスをとるように、地衡風の左方向に加速度が発生する必要がある。(これもあえて理解する必要はないかも(-_-;))


元気象庁予報官・鈴木和史のコラム
次回は「上空の前線を考える④(ジェットストリークと対流強化)」です。お楽しみに・・・☆
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この記事を書いた人
TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代
TeamSABOTEN 気象予報士スクール
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