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上空の前線を考える②(ジェットストリークの構造):元気象庁予報官・鈴木和史のコラム(第5号)~気象予報士の知識が高まる わかりやすい解説~

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コラムを書いた気象予報士は気象庁予報官や気象台長を歴任









TeamSABOTENの奥田純代です。

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【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第5号を公開します。

気象予報士の方も受験生にとっても知識が高まる、わかりやすい解説です。


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このブログで2022年5月に連載を始めた第1号から順に掲載しています。

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●鈴木和史先生のご経歴

・気象大学校卒業

・気象庁予報課予報官

・気象衛星センター解析課長

・宮崎地方気象台長

・鹿児島地方気象台長



●上空の前線を考える②ジェットストリークの構造【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第5号

(2022.7.29メルマガ配信 原文のまま)



前回紹介したJS(ジェットストリーク)は、局所的に風速が強く、温度傾度が大きい区域であった。衛星では、JSの寒気側には明瞭な暗域が存在していた。それでは、JSはどのような鉛直構造をしていたかをみてみよう。その前に、典型的な前線付近の鉛直構造の解析例を示す(図1)。


ジェットストリーク 高層断面図

これは西経110度のロッキー山脈西側での観測で、通常の高層観測のほか飛行機による観測も補っている。図の右側が南で、北に向かってFRC、TUS、INWという高層観測点が並んでいる。日本でいえば小笠原と筑波の距離に相当する。図の実線は等温位線で2K間隔で描かれており、290Kから10K毎に赤線で表した。破線は等風速線で10kt間隔で描かれており、300hPa付近に80ktの強風コアがある。


温位に着目して前線付近の構造の特徴を挙げる。


①温位は、同じ気圧面で比べた温度だから空気の密度を表していると考えてよい。大気は安定な成層状態を維持するので、下層の空気は重く上空の空気ほど軽い。したがって、上空ほど空気は軽く(密度は小さく)、温位(温度)は高い。


②温位が鉛直方向に混んでいる(鉛直傾度が大きい)ところは、エマグラムでは安定層や逆転層に相当している(TUSの観測点におけるエマグラム(図2)では、400hPa付近に圏界面に相当する気温の逆転がある。図1では400hPa を境に、それより上空では等温位線が密になっていることがわかる。


③圏界面(図1のオレンジ色の帯)を境に、温位の鉛直傾度は対流圏で小さく、成層圏で大きい。つまり成層圏の大気は対流圏に比べ、非常に安定している。


④前線層(図1の青色の帯)は、300k~320k付近の等温位面に沿っており、南に傾いている。そこでは温位の鉛直傾度が大きい。つまり前線層は安定である。前線層が安定だからこそ、前線をはさんだ暖気と寒気は容易に混じることはなく前線が維持されるともいえる。


ジェットストリーク エマグラム

このように典型的な前線付近の構造を参考に、前回紹介した事例(6月20日21時)の東経140度に沿った高層断面図(AXJP140)をみよう(図3)。


ジェットストリーク 高層断面図  AXJP140

等温位線は10K毎に赤線としている。圏界面はオレンジ色の帯で示す。札幌上空の圏界面高度は約220hPaで、その直下の250hPa付近に100ktの強風コアがある。前線層は、図1の典型例を参考にすると、330kと320kの等温位線にはさまれた、北から南に傾いている水色の領域(稚内から秋田の間の上空 )に相当する。この前線層は、札幌秋田間で南に傾いているが、秋田より南側でほぼ水平となっているので、下層には達していない上空にのみ存在する前線である。JSはこのように強風コアに相当する局所的な上空の前線である。


さて、ここでもう一つ重要なことは、「温位は保存量なので、総観スケールの動きは等温位面に沿って運動する」ということだ。330kの温位の高度は、札幌で約290hPa、秋田で約420hPaである。この付近の高度では、北よりの風が吹いているので、札幌から秋田に向けて空気は130hpa下降する。つまりJS付近では、対流圏上部や圏界面下部の乾燥した空気が下降して、これが水蒸気画像の暗域に対応している。このような構造がJS付近で形成されていることが、300hPa天気図、高層断面図、水蒸気画像から理解できる。


次回は、JS周辺での鉛直循環について話そう。



記事を書いた気象予報士は気象庁予報官だった









元気象庁予報官・鈴木和史のコラム

次回は「上空の前線を考える③(ジェットストリークの鉛直循環)」です。お楽しみに・・・☆



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この記事を書いた人

TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 奥田純代



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