上空の前線を考える①(ジェットストリーク):元気象庁予報官・鈴木和史のコラム(第4号)~気象予報士の知識が高まる わかりやすい解説~
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- 2025年7月9日
- 読了時間: 6分
更新日:2025年12月3日
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●鈴木和史先生のご経歴
・気象大学校卒業
・気象庁予報課予報官
・気象衛星センター解析課長
・宮崎地方気象台長
・鹿児島地方気象台長
●上空の前線を考える①ジェットストリーク【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第4号
(2022.7.15メルマガ配信 原文のまま)
前線は、地上天気図でおなじみだが、高層天気図には描かれていない。前線とは、異なる気団の境界なので、温度傾度が急な部分として定義することができる。つまり地上の前線と同様、温度傾度の大きい所があれば、上空(対流圏上部)でも前線が存在する。対流圏上部では水蒸気量が少ないので、雨や雲などの悪天を伴うことは少ないが、CAT※のような乱気流を伴うことが多い。なじみの薄い上空の前線の概念と構造について、数回に分けて話してみよう。
最初に、ジェットストリーク(jet streak:以後JSと記す)いう現象を取り上げる。JSは、対流圏上部の強風軸の中で、風速が局所的に極大となっている区域を指す。強風軸の流れの中を、強風コアが通り抜ける様子から、ストリークと呼ばれているのだろう(そういえば昔ストリーカーっていたね(^_-) )。
図1は、JSが発達していく過程の模式図である。メインのトラフ(赤の二重線)の後面から、寒気を伴うショートトラフ(青の二重線)が発生する(図1のa)。ショートトラフの寒気は、メインのトラフの等温線と接する部分で局所的に温度傾度が大きくなり、すると温度風の関係から周囲より風が強くなって、JSが形成されることになる。JSは、メイントラフの後面を南下する(図1のb)。そしてメイントラフに追いついて(図1のc)、その後はトラフ前面に出て弱まる(図1のd)という過程をたどる。

実例(図2)を示そう。6月19日から21日までの300hpa天気図である。緑で色付けした風速80kt以上の領域がJSである。メインのトラフ(赤の二重線)は動きが遅く、その後面からJSが南下し、20日には図1cのようにメイントラフと重なって最盛期となった。21日には、JSはメイントラフを追い越し、トラフも弱まっている。

最盛期である20日21時の状況を図3 (300hpa天気図と水蒸気画像)に示す。JSを赤矢印で表している。これを水蒸気画像に重ねると、JSの寒気側(北側)に沿って明瞭な暗域になっているのがわかる。JSを挟んで、北側の札幌の気温は-40.3℃、南側の秋田は-36.3℃と、温度傾度が大きくなっている。温度傾度の急な部分として前線を定義すると、JSはまさに上空の前線ということになる。

次回は、このJSの大気構造はどうなっているのかお話ししよう。
※CAT(Clear Air Turbulence)晴天乱気流:乱気流とは「航空機の運航などに支障が生じるような気流の乱れのこと」であり、「対流雲のない、一見穏やかそうな大気中でも、偏西風ジェットの周辺や前線面など風の鉛直シアが強い場所では強い乱流が存在することがあり」CATと呼ばれている。(気象科学事典より)

元気象庁予報官・鈴木和史のコラム
次回は「上空の前線を考える②(ジェットストリークの構造)」です。お楽しみに・・・☆
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この記事を書いた人は
気象予報士・気象防災アドバイザー
尾崎里奈です
TeamSABOTEN 気象予報士スクール
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