なんでも台風のせい?:元気象庁予報官・鈴木和史のコラム(第10号)~気象予報士の知識が高まる わかりやすい解説~
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【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第10号を公開します。
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●鈴木和史先生のご経歴
・気象大学校卒業
・気象庁予報課予報官
・気象衛星センター解析課長
・宮崎地方気象台長
・鹿児島地方気象台長
●なんでも台風のせい?【元気象庁予報官・鈴木和史のコラム】第10号
(2022.10.28メルマガ配信 原文のまま)
台風11号が沖縄付近にあり、台風から遠い本州各地でも大雨になったときの報道で、「台風から湿った空気が流れ込んで、」「台風の影響で本州各地で大雨が…」等の表現が見聞された。なんでも台風が原因と受け取られる報道に?を感じた。
9月2日の日中、台風が沖縄の南でほぼ停滞していたころ、近畿東海地方を中心に短時間強雨が発生した(静岡県磐田市で14時過ぎに1時間95.5mm)。図1で、台風は沖縄の南で935hPaと発達しているが、本州付近には前線が停滞している。台風の北側には、発達した雲域や組織的な雨雲はみられない。一方、停滞前線付近の対馬海峡や九州西海上に活発な雨雲が存在し、前線に沿った帯状の雨域が本州付近で東西にのびている。衛星やレーダーでは、これらの雨雲は台風とは別の成因、つまり前線に対応して発生しているように見える。

それでは台風から湿った空気が本州付近に流れ込んでいたのか?
2日9時の流線解析では(図2)、台風に伴う反時計周りの循環がみられるが、その流線は本州付近に達していない。本州付近は相当温位が集中した前線帯となり、本州中央部では、渤海湾付近の高気圧循環に伴う北よりの風と太平洋高気圧縁辺の南よりの風がぶつかる変形場※となっていて、前線構造は強化される傾向にある。

短時間強雨は、前線が強化されつつある範囲で発生、水蒸気の補給も本州南の太平洋からの南風によるもので、台風が水蒸気を送り込んでいるわけではない。台風は水蒸気をかき集めて発達するメカニズムを持つから、その台風から湿った空気が流れ出すはずはない。こうした誤った表現が堂々と報道されているのを見聞すると、気象予報士として恥ずかしい限りだ。
※変形場:ある方向から流れが集まり別の方向に流れていくパターン。鞍部ともいう(図3右)。変形場の流れが等温線傾度を強めるパターン(図3左参照)のとき、前線強化(フロントゲネシス)と呼ばれる。


元気象庁予報官・鈴木和史のコラム
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この記事を書いた人
TeamSABOTEN 気象予報士・気象防災アドバイザー 許斐知華
TeamSABOTEN 気象予報士スクール
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